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汚れつちまつた悲しみに…… / 中原 中也

 皆さん、詩を読んでいるだろうか。読んでいると答えたあなたは、自分が絶滅保護種に指定されていることを自覚すべきだ。今どき詩を日常的に読む人など皆無に等しい。その数たるや、日本全国の詩の愛読者を集めても、中央線でフライデーを読む人の1/10000以下だろう。別に統計を取ったわけではないが、そのくらいは察しがつく。

 そういう僕も実は詩などは殆ど読まない。が、昔は表現形式の王様は間違いなく詩だった。そもそも詩の歴史の長さに比べれば、小説の歴史の長さなどキューピー3分クッキングだ(意味不明)。その辺のことは前回小林秀雄対話集について紹介したときに少し書いたので、興味がある人は読んでもらいたい。何故つい最近まで長年王座に君臨し続けてきた詩が、ここ数十年で一気に廃れてしまったのか、僕は詩の歴史について明るくないので、知っている人がいれば教えて頂きたいのだが、僕の漠然とした認識として、次のような理由が挙げられる。

 詩。この言葉の響きを聞いた時の耳の痛さは、「純文学」という言葉を聞いたときのそれとよく似ている。よほどの文学狂かロマンチストでなければ、反応は二つに一つだ。すなわち、あざ笑うか聞かなかったフリをするか、だ。いやいや、無反応かもしれない。僕の個人的な経験からその理由を推測すると、問題の一端は学校教育にある。そう、あの忌まわしき国語の授業だ。

 「純文学」と詩、この二つは共にすっかり廃れてしまったが、今でも学校の教壇ではピンピンしている。(因みに何故僕が純文学にカギ括弧をつけるかについては、こちらを参照してほしい) そして、学校の授業で扱われる以上、文学のことを余り分からぬ教師でも、何かを生徒に教えて時間を潰さなくてはならない。だから大抵は、解説書を見ながら文章の中身をバラバラに分解して、分析的な説明を施す訳だ。(もちろんすべての先生がそうではないだろう)

 だが、それはまずい。「純文学」の授業ならまだしも、詩の授業でそれをやるのは、詩に始めて触れる子供に対する拷問だと思う。何故って、詩を分析的に読んで一体どうするのさ。恥ずかしながら、詩の素人である僕の考えを述べさせてもらえば、詩は音、それと感覚だ。頭で読むものでは決してない。詩を読んで何かを感じればそれでよいし、感じなかったらそれはそれでよい。詩に関して言えば、分からないものを分かろうとするのは不毛な努力だ。分かる人には分かるし、分からない人にはどうがんばっても分かるようなものではない。ただそれだけ。
 もちろん詩人には哲学者が多いから、詩には哲学的な意図や思想が込められている場合が多い。だからと言って、哲学を勉強したければ詩ではなく哲学書を読めばいいし、本当に哲学がしたいのならそもそも本など必要ない。詩を読んで哲学がわかるというのは、哲学を一生懸命勉強して哲学が分かるというのとは、本質的に異なると思う。だから、教師は詩の授業で時間を潰したければ、暗誦させることだ。それが詩人の感覚を教える最善の方法だと思う。

 ということで、僕もこの本については詳しく解説しないことにする。というか、解説するだけの頭がない。だから、解説できない(ゴメンナサイ)。因みに何故中原中也を選んだかというと、前回紹介した小林秀雄と色々と関係が深いからだ。つまり、女性関係なのだが。

 では最後に、表題作を紹介しよう。これを読んで何かを感じたら、あなたも絶滅保護種かもしれないが、それは存分に誇るべきことだろう。


      汚れつちまつた悲しみに……


   汚れつちまつた悲しみに
   今日も小雪の降りかかる
   汚れつちまつた悲しみに
   今日も風さへ吹きすぎる

   汚れつちまつた悲しみは
   たとへば狐の革裘(かはごろも)
   汚れつちまつた悲しみは
   小雪のかかつてちぢこまる

   汚れつちまつた悲しみは
   なにのぞむなくねがふなく
   汚れつちまつた悲しみは
   倦怠(けだい)のうちに死を夢む

   汚れつちまつた悲しみに
   いたいたしくも怖気づき
   汚れつちまつた悲しみに
   なすところもなく日は暮れる……

 

   

コメント

[C3] 純粋に生きる

myshkinさん
TBありがとうございました。

それはしづかで、きらびやかで、なみなみと湛〈(たた)〉へ、
去りゆく女が最後にくれる笑〈ゑま〉ひのやうに、

厳〈おごそ〉かで、ゆたかで、それでゐて佗〈(わび)〉しく
異様で、温かで、きらめいて胸に残る……

あゝ、胸に残る……



中也いいですね〜
僕はなんといっても
この「盲目の秋」がステキだと思います ^^

  • 2008-12-23 09:40
  • ブログ社長 ムラウチ
  • URL
  • 編集

[C4] Re: 純粋に生きる

>ブログ社長 ムラウチ さん

コメントありがとうございました。

素敵な詩ですが、やはり彼の詩はどこかもの悲しいですね。
ただ、昭和の文学者にありがちな陰気さとは違った暗さが僕には魅力です。

是非また来てください。
  • 2008-12-23 10:03
  • myshkin
  • URL
  • 編集

[C5]

初めまして、トラックバックありがとうございました。

詩って、難しいですよね。どう反応して良いのか。
でも僕も、暗誦を勧めるのには同感です!
好きな詩を心に持ってるって、お洒落なことのように思います。

…僕も「盲目の秋」好きです!(笑)

ではまた。

[C6] Re: タイトルなし

コメントありがとうございます。

確かに詩って難しくて、僕も良く解らないんですけど、
最近は難しく考えないことにしてます。
解らないものに関しては放置プレーで(笑)
何年か後にまた読んだら、何か感じるものがあるかも、ってスタンスで良いんじゃないでしょうか。

「盲目の秋」は確かに表題作よりもいいですね。




> 初めまして、トラックバックありがとうございました。
>
> 詩って、難しいですよね。どう反応して良いのか。
> でも僕も、暗誦を勧めるのには同感です!
> 好きな詩を心に持ってるって、お洒落なことのように思います。
>
> …僕も「盲目の秋」好きです!(笑)
>
> ではまた。
  • 2008-12-25 14:02
  • myshkin
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  • 編集

[C78] はじめまして

私も好きです。

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好きな作家は橋本治、島田雅彦、遠藤周作、ヴォネガット、サリンジャー、ル・グウィン、カミュ、ドストエフスキー(←バラバラ)などなど。あと小林さんちの秀雄くんや、インテリ源ちゃんこと高橋源一郎も愛読。

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